この記事はこのような疑問やニーズのある方に向けて書いています。
就職活動や転職活動での面接や、論理的思考力を鍛えるための練習として活用されている「フェルミ推定」。
フェルミ推定の考え方ややり方を覚えれば誰でも簡単にできるようになるものですが、やり方が全くわからない初見の人は手も足も出ず、その最初の経験から心が折れてしまうこともしばしば…
私も最初は全く解けず気持ちが折れかけたこともありましたが、改めてフェルミ推定をやる目的や解答プロセスをインプットし、約2週間ほど書籍などでトレーニングしたところ、基本的な問題であればロジックを基に実際の数字と近しい値で推定できるようになりました。
そこで今回はフェルミ推定初心者を脱却した私が、フェルミ推定ができるようになりたいという方に向けた、そもそもフェルミ推定とは何か、メリットといった基本的な部分から、例題と解答を基にフェルミ推定のやり方を解説して行きたいと思います!
目次
フェルミ推定とは
フェルミ推定とは「わからない数字」を自分の頭の中にある知識を使って、数字を導くためのロジックを作り、概算の数字を推定することを言います。
例えば「日本の電柱の数は?」と聞かれた際に、あなたはすぐに答えられます?
Googleで検索すれば日本の電柱の数は約3,600万本であることがはすぐにわかりますが、フェルミ推定ではこの電柱の数を、何も手がかりがない状態から、自分の頭の中にある知識を総動員させて推定していきます。
一見「何の意味があるの?」と思われる作業ですが、どうやって計算すればよいかを考える仮説思考力や論理的思考力を鍛えるための良いトレーニングでになっており、フェルミ推定ができると様々なメリットがあります。
(出典:地頭力を鍛える)
フェルミ推定のメリット
フェルミ推定ができるようになることによるメリットは大きく2つあるのでそれぞれ見ていきましょう。
就職・転職活動の面接に役立つ
フェルミ推定は上述の通り外資系の企業やコンサルティング業界への就職や転職活動の面接の場面でよく用いられます。
面接の場で筋の通ったロジックを基に解答できれば、面接の通過率も間違いなく上がります。
そのため、上記会社や業界への就職、転職を考えている方は必須のスキルとなりますし、たくさんの問題を解いて解答に慣れておけば他の候補者との差別化にもつながるのでぜひ習得しておきましょう。
ところでなぜ企業は面接の場でフェルミ推定を行うのでしょうか。
最も大きな理由は「短時間で志望者の論理的思考力を判断することができるから」です。
面接は30分〜1時間という短い時間で、志望者が優秀な人材か、入社後活躍できる人材かどうかを面接官が判断しなければなりません。
そのために面接官は様々な質問をしていくわけですが、コンサルティング業界といったような論理的思考能力が求められるような会社では、面接の場で物事を論理的に考える力があるかどうかを判断する必要があります。
そこでフェルミ推定で「電柱の数は何本ありますか?」といった問題を出し、その解答プロセスや質疑応答を見れば、ある程度志望者が論理的思考能力があるかどうかを短時間で計れるため、面接の場でフェルミ推定が使われているのです。
地頭力が鍛えられビジネスシーンで役立つ
上記の通りフェルミ推定は「コンサルティング業界に就職するための手段」としての印象が強いですが、フェルミ推定の考え方ややり方を知っていることで、実際のビジネスシーンでも非常に役立ちます。
ビジネスの現場では学校のテストと違い「答え」がありません。
- どうすれば目標を達成できるか
- どうすれば売上が上がるのか
- 企画を実施することでどれぐらいの期待効果が見込めるか
フェルミ推定もまさにこの流れの下で数字を推定していくことになり、フェルミ推定によってビジネスの現場で必要な一連の流れを鍛えることができるのです。
フェルミ推定ができるようになることで仕事が必ずうまくいくというわけではありませんが、フェルミ推定をするためのベースの知識・スキルは社会人なら誰しもが持っておきたいものだと私は考えます。
(かくいう私も、特にコンサルティング業界に転職することを目的にするわけではなく、単純に地頭力を鍛えたいなと思いフェルミ推定の問題に取り組んでいます。)
フェルミ推定のやり方
フェルミ推定をやることのメリットを理解したところで、ここからは実際にフェルミ推定を解くためのやり方を勉強しましょう!
フェルミ推定は下記5つのステップで解いていきます。
何事も基礎が大事なので、必ずこの5つのステップは覚え、このステップに沿ってフェルミ推定の問題を解くようにしましょう。
STEP | 詳細 | |
1 | 前提条件 | 解く問題の前提条件を定義する |
2 | アプローチ設定 | どういったアプローチ方法で数値を推定していくか、基本的な計算式を定義する |
3 | モデル分解 | 計算の精度を上げるために、アプローチ設定で定義した計算式を分解する |
4 | 計算実行 | モデル化で分解した計算式で計算をする |
5 | 現実性検証 | 実際の数値と合っているか確認する |
それぞれのステップ毎に詳細を解説していければと思いますが、具体例があった方がわかりやすいと思いますので、今回は「自転車の数は何台あるか」という問題を基に解説していきます。
1. 前提条件
そもそも何の数字を推定するのかといった前提を定義することを「前提条件」といいます。
「自転車の数は何台あるか」というお題も、日本国内なのか世界中なのか、電気自転車は含めるのか含めないのか…といったように人によって定義がバラバラです。
そのためフェルミ推定では最初に「いつ、どこの、何の数字を」といった条件を定義しましょう。
ここでは「日本国内における2022年時点の自転車の数(電気自転車や三輪車なども含む)」として定義し進めていきます。
2. アプローチ設定
推定する対象が決まった後に、その対象を導くための基本的な計算式を作ることを「アプローチ設定」といいます。
どうすれば概算の数字を求めることができるのか、自分の中で仮説(仮の答え)を作り、計算式に落とし込んでいきましょう。
ここでは日本国内の自転車の数は、日本人のどれぐらいの割合が、何台自転車を持っているかで求められそうです。
そのためベースの計算式は「日本の人口 × 自転車保有率 × 自転車の平均保有数」と定義しようと思います。
3. モデル分解
アプローチ設定で定義した計算式を、数字の推測ができそうなところまで分解していくことを「モデル分解」といいます。
先ほど国内の自転車の数を求めるために「日本の人口 × 自転車保有率 × 自転車の平均保有数」と定義しましたが、日本の人口は約1.2億人、平均保有数は基本1台と言えそうですが、自転車の保有率が難しいですね。
ここで「大体50%の人が自転車を持っているだろう!」とざっくり数字を代入してしまうのは、決して論理的とは言えません。
そこで一見検討がつかない要素を分解していくためにモデル分解するのですが、分解する際のポイントは「その要素は何によって差が生じるか?変数は何か?」を頭の中で想像することです。
自転車の保有率は何によって変わりそうでしょうか?
私は年齢によって保有率が変わってくるのではないか、と仮定しました。
例えば学生は通学や交通手段として利用するため保有率が高くなるでしょうし、高齢者は自転車を使う頻度が減るため保有率が下がるのではないか、といったことが推測できます。
そのため、各要素を年齢という新たな軸で分解し、下記のように整理しました。
よりイメージしやすくなったのではないでしょうか。
〜5歳 | 5〜10歳 | 10代 | 20代~50代 | 60代 ~ | |
人口 | |||||
保有率 | |||||
平均保有数 |
4. 計算実行
モデル分解で細かく分解した式に、数値を代入して計算していきます。
モデル化で定義した数字を全て掛け合わせると、「7,530万台」と推定できました。
〜5歳 | 5〜10歳 | 10代 | 20代~50代 | 60代 ~ | |
人口 | 600万 | 600万 | 1,200万 | 6,000万 | 2,400万 |
保有率 | 20% | 50% | 90% | 80% | 50% |
平均保有台数 | 1台 | 1台 | 1台 | 1台 | 1台 |
保有台数 | 150万 | 300万 | 1,080万 | 4,800万 | 1,200万 |
- 5歳未満:三輪車を持っている子が5人に1人くらいだろうとして20%
- 5〜10歳:自転車に乗り始める人が増える。2人に1台は持っているだろうとして50%
- 10代:通学や移動手段が自転車がメインになる。ほとんどの子が持っているだろうとして90%
- 20代〜50代:10代よりも保有率は減りそうだが、女性は家事や育児に使うとして8割、男性が6割として平均で70%とした
- 60代以上:2人に1台は持っているだろうとして50%
5. 現実性検証
最後に推定した数字を、実際の数字と比べて、推定した数字が合っているかどうか検証していくことを「現実性検証」といいます。
今回の自転車の保有台数の推定値と実際の値は下記の通りです。
自転車の保有台数 | |
推定値 | 7,530万台 |
実際の値 | 6,870万台 |
国土交通省によると、2019年時点で自転車の保有数は6,870万台であり、今回推定した値とニアリーイコールでした。
いかがだったでしょうか。
例題と解答の流れをみると「意外とそこまで難しくなさそう」と思いませんでしたか?
そうなんです。フェルミ推定は特別な知識は必要なく、解答プロセスの理解と、自分の頭で考える力があれば誰でも解ける問題なのです。
再掲となりますが、改めてフェルミ推定を解く5ステップをしっかりと頭の中に入れておきましょう!
STEP | 詳細 | |
1 | 前提条件 | 解く問題の前提条件を定義する |
2 | アプローチ設定 | どういったアプローチ方法で数値を推定していくか、基本的な計算式を定義する |
3 | モデル分解 | 計算の精度を上げるために、アプローチ設定で定義した計算式を分解する |
4 | 計算実行 | モデル化で分解した計算式で計算をする |
5 | 現実性検証 | 実際の数値と合っているか確認する |
最後に、フェルミ推定の練習でお世話になった「地頭力を鍛える」という本で紹介されていたシャーロックホームズの相棒ワトソンの言葉が非常に印象に残っているので、解答の締めとしてここで紹介しておきます。
「推論の根拠を聞くと、いつでもばかばかしいほど簡単なので、僕にだってできそうな気がするよ。それでいて実際は、説明を聞くまでは、何がなんだかわからないのだから情けない。眼だって君より悪くなんかないつもりなんだかねえ」(『ボヘミアの醜聞』の冒頭部分で、久々に再会したホームズに自分の近況をぴったりと推理されたことに対して)
(出典:地頭力を鍛える)
フェルミ推定に必要なもの
フェルミ推定には特別なスキルは必要ないのですが、これを覚えておくとフェルミ推定に役立つ、スピードが上がる「知識」や「計算式」があるのでここで紹介しておきます。
知識
まずは知識から。
人口や世帯数、国土面積など、学校の地理や公民の授業でやったような定量情報を知っていると推定する際に役立ちます。
知らなくても概算で出すことができる数字もありますが、解答スピードを上げるために覚えておきましょう!
(とは言えいきなり無理に覚える必要はありません。色々な問題を解くことによって知識が定着していきます。)
- 日本の人口:1.2億人
- 世界の人口:78億人
- 世界の国の数:196か国
- 日本の世帯数:5,000万世帯
- 日本の出生数:100万人
- 大学進学率:約50%
- 日本の国土面積:38万km2
- 日本の森林地帯の割合:日本国土の3分の2
計算式
ややテクニック寄りの話になってしまいますが、フェルミ推定の問題形式はいくつかのパターンに分けられ、パターンごとに使える計算式があります。
その計算式を覚えておくと、アプローチ設定する際に役立つため、下記に問題と具体的な問題例、そしてそれを解くための基本的な計算式をまとめました。
いろいろな問題を解いていく中で自然と「この問題ならこの計算式だな」と勝手にイメージできるようになるので、これも知識同様一気に覚えるのではなく、問題を解いていきながらインプットしていきましょう。
問題 | 問題例 | 計算式 | |
1 | 〇〇の市場規模 | ぬいぐるみの市場規模 | 母数 × 購入割合 × 商品単価 × 購入頻度 |
2 | 〇〇の来客数 | 日本全国の歯医者の患者数 | 母数 × 利用割合 × 利用頻度 |
3 | 〇〇の1店舗あたりの売上 | コメダ珈琲1店舗の売上 | キャパシティ × 稼働率 × 回転率 × 客単価 × 営業時間(営業日数) |
4 | 〇〇の1店舗あたりの来客数 | 歯医者1店舗の来客数 | キャパシティ × 稼働率 × 回転率 × 営業時間(営業日数) |
5 | 〇〇の数 | 日本の電柱の数 | 日本の総面積 ÷ 〇〇あたりの面積 |
6 | 〇〇の数 | 日本の自転車の数 | 母数 × 保有率 × 平均保有数 |
7 | 〇〇の数 | 日本の歯医者の数 | 全体の需要(2) ÷ 1店舗あたりの供給量(4) |
(※各問題例は全て当ブログに私が実際にやってみた解答プロセスを載せています。この計算式を使ってどう計算していったか気になる方はぜひみて見てください!)
フェルミ推定の簡単な例題を解いてみよう
ここまでフェルミ推定とは何か、メリット、解答方法、必要な知識や計算式を解説してきました。
最後に実際のフェルミ推定の例題と解答を用意したので実際にチャレンジいきましょう!
その前にフェルミ推定初心者の方の場合、フェルミ推定に取り組む上で一つ注意点があります。
それはいきなり難しい問題から解いてしまうこと。
最初から難しい問題にチャレンジしてしまうと、
- 難しくて全然できなかった…
- 推定したけど実際の値と大きくずれてしまった…
といったことが起こり、自信を失ってしまうことが多いです(私もそうでした)。
そのため最初は簡単な問題から解いていき、実際の値と意外と合っているなという実感、成功体験を十分積んでから、実際の面接で出るような難しい問題にチャレンジしていく方が良いと思います。
なのでここでは簡単な問題を3つご用意したので、まずはこの3問で力試しを行なっていき、難しい問題にチャレンジしたい方は当ブログで様々な例題と解答を用意しているのでそちらをチャレンジしてみてください!
例題1:未成年者の数は?
まずは求める数字の定義から。ここでは日本国内の現在の未成年(0〜19歳)の人数を求めていきます。
各年齢の平均人数がわかれば、その数に対し年齢数を掛ければ導けそうですね。
そのため計算式は「各年齢の平均人数 × 年齢数」となります。
ここから更に分解する必要はないので、モデル分解は割愛します。
定義した計算式に、数字を代入して計算していきます。
1年あたりの出生数が100万人なので、それに20を掛ければ、日本国内の未成年者の数は約2,000万人と推定できました。
最後に推定した値と実際の値に乖離がないか検証しましょう。
総務省統計局の統計によると、22年1月時点の0~19歳の人口は2,032万人で、実態と近い値で推定することができました。
例題2:日本の男子大学生の数は?
まずは求める数字の定義から。ここでは日本国内の大学に通っている男子の数を求めていきます。
男性と女性の比率が1:1であることから、大学生の数を求めてその数字を半分にすれば導けそうですね。
そのため計算式は「大学生の数 × 男性の割合」となります。
次に大学生の数を求めるために、より細かく分解していきましょう。
大学に通える人口に対して、大学への進学率を掛ければ、大学生の数は求めることができます。
そのため大学生の数を「19~22歳の人口 × 大学への進学率」として分解することができました。
定義した計算式に、数字を代入して計算すると、約100万人として推定することができました。
大学生の数 × 男性の割合
= 19~22歳の人口 × 大学への進学率 × 男性の割合
= 400万人 × 50% × 50%
= 100万人
最後に推定した値と実際の値に乖離がないか検証しましょう。
文部科学省の調査によると令和元年時点の男子大学生の数は約143万人で、実態よりも小さい値で推定しておりました。
原因としては、大学への進学率が52〜54%と直近上がっていること、大学生の男女比は男子が55%と、大学生は男子の方が多いだろうという推測ができなかったことが挙げられます。
例題3:犬の数は?
例題3は1と2に比べてやや難しい問題になっています。いかがだったでしょうか。
「犬の数」について、大きく分けて
- 個人で飼育している犬
- 法人(主にペットショップなど)で飼育している犬
の2種類ありますが、今回は「個人で飼育している犬」の総数を推定しようと思います。
次にどういったアプローチで計算するか、基本的な式を作ります。
犬は世帯ごとに飼育すると考えられるので、世帯数をベースに考えていきましょう。
その上で犬の飼育数は、日本の世帯数に対し、どのぐらいの割合の世帯がペットを飼っていて、その中でどれぐらい犬を、何匹飼っているか、といったアプローチで解けそうなので、
- 日本の世帯数 × ペット飼育率 × 犬飼育率 × 平均飼育数
で求めることができますね。
この計算式をベースにフェルミ推定を進めていきましょう。
アプローチ設定で定義した計算式を、計算の精度を上げるために分解していきましょう。
▷日本の世帯数
日本の世帯数はフェルミ推定の必須知識であり、合計5,000万世帯です。
▷ペット飼育率
日本の世帯数のうち何%ペットを飼育しているか、大体3分の1の割合でペットを飼育しているだろうと考えて、ここでは30%と仮定します。
▷犬飼育率
ペットを飼育している世帯の中で犬を飼育している割合について。
ペットの種類は一般的には犬か猫、そのほか少数派としてうさぎやハムスター、文鳥や爬虫類が挙げられます。
犬や猫が大半であることを考えると、大体平均して下記割合になるだろうと定義し、犬飼育率を40%としました。
- 犬:40%
- 猫:40%
- その他:20%
▷平均飼育数
複数飼っている世帯もいると考え、5世帯に1世帯が複数犬を飼っていると仮定し「1.2」と仮定します。
モデル化で定義した数字を全て掛け合わせると、「720万匹」と推定できました。
日本の世帯数 × ペット飼育率 × 犬飼育率 × 平均飼育数
= 5,000万 × 30% × 40% × 1.2
=720万
今回推定した数字を、実際の数字と比べて検証してみましょう。
犬の飼育頭数 | |
推定値 | 720万匹 |
実際の値 | 710万匹 |
一般社団法人ペットフード協会によると、2021年の犬の飼育頭数は710.6万匹であり、今回推定した値は実際の値とほぼイコールになりました。
まとめ
今回はフェルミ推定をすることによるメリットややり方を解説していきました。
フェルミ推定は就活や転職活動の面接で役立つのはもちろんですが、ビジネスマンとして必要なスキルを鍛えることができるトレーニングになります。
ぜひ今回の記事でしっかりやり方を覚えていろいろな問題を解いていき、地頭力を鍛えていきましょう!
また、フェルミ推定のいろんな問題に挑戦して鍛えていきたい!という方は、当ブログでフェルミ推定の例題と私の解答を載せた記事がたくさんあるので、そちらを参照してみてください!